景観生態学が専門で、近年は里山・里地を対象に、人の暮らしを支えながらずっと存続してきた「ふるさとの自然」の実態とそれを育んできたひとびとの知恵や工夫について研究しています。私が新浜地区を最初に訪れたのは2011年6月でした。震災直後は、変わり果てた沿岸域に立ち入ってよいものか迷いもありましたが、津波で何もかもさらわれてしまったと思われていた海辺に植物が残っているようすを見て、自然の再生プロセスを記録することが私の使命だと思い、以来通い続けています。
自ら再生を続けている海辺をより多くの人に見ていただいて、本物の自然ならではの力強さを感じてほしいと願ってきたので、川俣さんの「ひとびとを海にいざなう」という言葉に心を動かされました。新浜の復興まちづくりでは、必ず「みんなの…」という形容詞が用いられます。「みんなの」には、お互いを思いやりながら、自分の課題ととらえて前に向かう、といった意味があります。辛いことがあった海辺・里浜だからこそ、こういった活動がつながって大きなムーブメントになっていくといいですね。
『季刊「まちりょく vol.36」』(公益財団法人仙台市市民文化事業団、2019)