About
仙台インプログレスは、津波で被害を受けた仙台市内沿岸部のいくつかの地区で、2017年から長期的なアートプロジェクトを行なっている。
海岸線には7mの防潮程ができ、沿岸から200mの区域には人が住めなくなり、空き地が続く。しかしそれでも自分の住んでいた土地に住み続ける住民たちもいて、その人たちとの交流からこのプロジェクトが始まった。
プロジェクトの特徴は、津波被害の記録や記憶を含めた東日本震災をテーマとしたものではなく、今、そしてこれからのこの地域での新たなコミュニティ作りを手助けすることに重点が置かれている。あくまでも住み続ける人たちの日常の中で、以前あったコミュニティの繋がり、活性化を促すさまざまなアクティビティを提案し、実践している。
例えば、津波で流された橋の再構築であったり、以前の住民が街を訪れ、知り合いの人たちと立ち話をしているのを見て、道路側にいくつかのベンチを設置した。家屋や物がなくなっても、以前あった近所付き合いのコミュニティは、何かのきっかけで、取り戻せるのではないかと思う。
今ある現実を受け入れ、今そこでやることでしか、今を越えることができないような気がする。
これからも引き続き、この地域にこだわりたいと思っている。
川俣正
What is Sendai in Progress
フランスを拠点に国際的な活動をおこなっているアーティスト川俣正は、木材や廃材を使用した大規模なインスタレーションとともに、「ワーク・イン・プログレス」と呼ばれるプロセスを重視したアートプロジェクトで知られています。その特徴は、プロジェクトを進めながら都度地域住民や地域社会を巻き込み、地域の課題や資源を顕在化させていくことにあります。
2011年3月11日の東日本大震災により大きな被害を受けた仙台市沿岸部。2016年7月、リサーチに訪れた川俣が、仙台市宮城野区岡田の新浜地区の住民から「橋が津波で流されて運河を渡れなくなった」と聞き、橋の機能を持った作品を構想したことから「仙台インプログレス」は始まりました。 沿岸部の状況は、刻々と変化しています。仙台インプログレスでは、沿岸部に流れる「貞山運河」に沿って主に3つの地域、仙台市宮城野区岡田新浜エリア、若林区荒浜エリア、若林区井土エリアを対象にしています。「仙台インプログレス」の大小さまざまなアクティビティを通じて、時間をかけて地域との関係を深めながら展開しています。
What is sendai mediatheque?
せんだいメディアテークは、図書館やイベントスペース、ギャラリーの機能を持ち、美術や映像文化の活動拠点であると同時に、すべての人が、さまざまなメディアを使いこなし、メディアを通じて自由に情報のやりとりができるようにお手伝いする公共施設です。 2023年現在、その役割は施設の外にも開かれています。2011年3月11日に起こった「東日本大震災」の市民によるアーカイブ活動のプラットフォーム運営や市民団体の情報発信・活用に関わる活動のサポート、様々な外部機関との連携など、せんだいメディアテークの理念のひとつ「端末(ターミナル)ではなく節点(ノード)へ」という言葉のもとに地域での事業を展開しています。
What is art node?
せんだいメディアテークのコンセプトのひとつに「端末(ターミナル)ではなく節点(ノード)である」という言葉があります。そこからノードを抜き出し、再解釈した「せんだい・アート・ノード・プロジェクト(略称「アートノード」)を2016年からスタートさせました。 アートノードでは、アーティストが、仙台・東北をリサーチし、同時代性のある現代アート作品を制作、さまざまなプロジェクトを展開します。そして、調査、企画、制作、発表までの過程を人々と共有し、鑑賞にとどまらない活動への接点をつくることで、より多くの人が関わり、熱のある「アートの現場」を仙台につくりだしていきます。また、アートを囲み、学び、視点を広げ、考えを深めるTALKやMEETINGなど多彩な機会をもうけます。
Profile
川俣 正
1953年北海道三笠市出身。1982年第40回ヴェネツィア・ビエンナーレ、1987年ドクメンタ8など大規模な国際現代美術展への出品を重ねてきた、海外でもっともよく知られている日本人アーティストの一人。横浜トリエンナーレ総合ディレクター、東京藝術大学大学院教授、パリ国立高等芸術学院教授などを経て、現在もパリを拠点に活動している。
既存の美術表現の枠組みを超えて、建築や都市計画、歴史や地域コミュニティといった異なる分野と積極的に関わり、長期的なプロジェクトをダイナミックに展開するスタイルは、アートシーンに大きな影響を与え続けてきた。